湯浅町条例第22号    湯浅町障がいを理由とする差別をなくす条例 前文  町民等は、皆等しく基本的人権を享有するかけがえのない存在である。町民等一人ひとりが、その尊厳を重んじられるとともに、住み慣れた地域で安心して暮らせる共生社会を実現することが、私たちの願いである。  しかしながら、障がいのある人には、障がいによる生活のしづらさに加え、社会参加を阻害する物理的な要因、周囲の理解不足や偏見、誤解、慣習等の意識上の障壁がある。  その結果、障がいのある人が、自己の責任によるものではないのにかかわらず、不当な差別的扱いを受けたり、障がいの特性に応じた配慮が十分されていないことにより、日常生活のあらゆる場面において安心して生活することが困難な状況が今なお存在している。また、障がいに加え、その他複合的な原因により生きづらさや差別感を感じる状況もある。  私たちは、それらの状況を解消し、全ての町民等が基本的人権の享有主体として自己の尊厳を持ち安心して生活することのできる、いかなる種類の差別もない共生社会の実現をめざし、ここに、湯浅町障がいを理由とする差別をなくす条例を制定する。 (目的) 第1条 この条例は、町における障がいを理由とする差別の解消に関し、基本理念を定め、町、町民等及び事業者の責務を明らかにするとともに、障がいを理由とする差別の解消を推進するための基本的な事項を定め、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)による施策と相まって障がいに対する理解を深め、障がいの有無にかかわらず町民として個人の権利や尊厳を享受することができる住みよい共生社会の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 障がい 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難病を原因とする障がいその他の心身の機能に障がいがあり、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に制限を受ける状態をいう。 (2) 差別 障がいを理由として障がいのない人と異なる不利益な取扱いをすること。又は社会的障壁の除去の実施について合理的配慮を怠ることをいう。 (3) 社会的障壁 障がいのある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (4) 合理的配慮 障がいの状態に応じた社会的障壁の除去のための必要かつ合理的な現状の変更又は調整を行うことをいう。又は過度の負担を課さないものをいう。 (5) 町民等 湯浅町内に居住し、又は通勤、通学し、若しくは湯浅町を訪れる人をいう。 (6) 事業者 湯浅町内において事業活動を行う人をいう。 (7) 児童 満18歳に達するまでの人をいう。 (8) 家族等 配偶者、父母、子及び配偶者の父母、並びに同居する祖父母、兄弟姉妹及び孫のほか、後見人やその他の人をいう。 (9) 難病 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)第4条に規定する治療方法が確立していない疾病その他の特殊な疾病をいう。 (10) 虐待 次に掲げる行為をいう。 ア 障がいのある人の身体に外傷が生じる、若しくは生じるおそれのある暴行を加える、又は正当な理由なく障がいのある人の身体を拘束すること。 イ 障がいのある人本人の意思にかかわらず、交際又は性的な行為をすること。 ウ 障がいのある人に対する暴言等心理的外傷を与える言動を行うこと。 エ 障がいのある人を衰弱させるような減食又は長時間の放置等養護を著しく怠ること。 (基本理念) 第3条 共生社会を実現するため、次に掲げる事項を基本理念とする。 (1) 全ての町民等が、等しく基本的人権を有する個人として、障  がいを理由とする差別を受けることなくその尊厳を重んじられる こと。 (2) 社会全体で相互理解と合理的配慮の推進に取り組み、障がいの 有無にかかわらず、平等を基本として、誰もが参加できる社会づくりをめざすこと。 (町の責務) 第4条 町は、基本理念にのっとり、障がい及び障がいのある人に関する理解の促進を図るとともに、障がいを理由とする差別の解消に関する施策を総合的かつ計画的に実施する。 (町民等の責務) 第5条 町民等は、基本理念にのっとり、障がい及び障がいのある人に関する理解を深め、町が実施する施策に協力するよう努めるものとする。 2 町民等は、差別や虐待を受けたと思われる障がいのある人を発見したときは、速やかに町長に通報しなければならない。 (事業者の責務) 第6条 事業者は、基本理念にのっとり、障がい及び障がいのある人に関する理解を深め、町が実施する施策に協力するとともに、障がいのある人と対話し、合理的配慮の推進に努めるものとする。 2 事業者は、差別や虐待を受けたと思われる障がいのある人を発見したときは、速やかに町長に通報しなければならない。 (相互理解の促進) 第7条 町、町民等及び事業者は、障がいを理由とする誤解や偏見から生ずる差別を解消するため、障がいについて相互に理解を深めなければならない。 2 町、町民等及び事業者は、相互理解の促進に際し、合理的配慮に基づいた研修の実施、相互に交流できる機会の提供その他必要な取組に努めなければならない。 (情報及びコミュニケーションに関する合理的配慮) 第8条 町は、障がいのある人が地域で自立した生活を営むにあたって必要とする情報について、障がいのある人の意思を尊重し、障がいの状態に応じたコミュニケーションにより、情報提供をしなければならない。 2 町は、情報の提供及び受領にあたり、手話、要約筆記等のコミュ  ニケーション手段の普及及び拡大をしなければならない。 3 町民等及び事業者は、コミュニケーション手段の普及及び利用の  促進に協力するよう努めるものとする。 (保育及び教育に関する合理的配慮) 第9条 町は、障がいのある児童の保育及び教育を受ける機会を保障し、共生社会の実現に向けて障がいのある児童が障がいのない児童と共に、保育及び教育を受けられるよう配慮し、合理的配慮の提供等必要な施策を講じなければならない。 2 町は、障がいのある児童及び家族に対して、教育や進学に関する相談支援を行うなど適正な措置を講じなければならない。 3 町は、障がいのある児童が、自立を図り社会参加することができるよう、適切な措置を講じなければならない。 (雇用及び就労に関する合理的配慮) 第10条 町は、障がいのある人の希望に応じ、障がいのある人が就労を行えるよう、行政、事業所、福祉、医療及びその他関係者による支援体制の整備をしなければならない。 2 事業者は、障がいのある人にとって必要とされる雇用及び就労に関する環境を整備するよう努めるものとする。 (住居及び公共交通に関する合理的配慮) 第11条 町は、障がいのある人の住宅の確保を円滑にするための支援体制の整備をしなければならない。 2 町は、障がいのある人の公共交通機関の利用を円滑にするための支援体制の整備をしなければならない。 3 事業者は、前二項に掲げる合理的配慮に取り組むよう努めるものとする。 (防災に関する合理的配慮) 第12条 町は、障がいのある人やその家族が、災害発生時に必要とされる援護の内容を定め、その支援体制の整備をしなければならない。  (文化及びスポーツに関する合理的配慮) 第13条 町は、障がいのある人が円滑に文化活動・スポーツ等を行うための支援体制の整備をしなければならない。 (合理的配慮の評価) 第14条 町は、この条例に基づく合理的配慮の実施状況を確認しなければならない。 2 町は、障がいのある人に対する理解を広げ、差別の解消について模範となる事業者を表彰することができる。 (差別等事案を解決するための取組) 第15条 町は、差別等事案を解決するため、関係者が協議する場を設けなければならない。 (相談) 第16条 障がいのある人、その家族又は関係者は、差別に該当すると思われる事案について町に相談することができる。 2 町は、前項に掲げる事務の全部又は一部を次の各号に掲げる者(以下「相談員等」という。)に委託することができる。 (1) 身体障がい者相談員(身体障害者福祉法(昭和24年法律283号)第12条の3に規定する身体障害者相談員をいう。) (2) 知的障がい者相談員(知的障害者福祉法(昭和35年法律37号)第15条の2に規定する知的障害者相談員をいう。) (3) 障がいのある人への相談支援を行う事業者 (4) 前三号に掲げるもののほか、特に町長が適当と認める人 3 相談員等は、委託を受けた業務に関して知り得た内容を他者に漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 (助言及びあっせん) 第17条 障がいのある人、その家族又は関係者は、差別等事案があるときは、町長に対し、当該差別等事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うよう申し立てることができる。 2 町長は、前項の助言又はあっせんを行うことの適否の判断を行う場合において、当該差別等事案に係る障がいのある人及び関係者に対し、説明又は意見を聞き、資料の提出を求めることができる。 3 町長が助言又はあっせんを行うことが適当と認めたときは、当該差別等事案に係る障がいのある人及び関係者に対し、助言又はあっせんを行うものとする。 (勧告) 第18条 町長は、前条の規定によりあっせんを行った場合において、差別をしたと認められる人が正当な理由なく当該あっせんに従わないときは、当該差別をしたと認められる人に対して当該あっせんに従うよう勧告することができる。 (公表) 第19条 町長は、前条の規定による勧告を受けた関係当事者が、正当な理由なく、当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。また、公表するときは、当該関係当事者に対し、その旨を通知し、意見を述べる機会を与えるものとする。 (委任) 第20条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は町長が別に定めるものとする。       附 則  この条例は、平成31年4月1日から施行する。